ラテックスバルーンのラテックスとは?
一般的にゴム風船と呼ばれている風船を、玩具・バルーンの業界では「ラテックスバルーン(Latex balloon)」と呼んでいます。また「ラテックスバルーン(ゴム風船)」と表記されることもあります。ラテックスバルーンのラテックスとは? ラテックスバルーンがゴム風船なら、ラテックス=ゴムなの? 「ラテックス」と「ゴム」、2つの違いを説明します。
ラテックス
乳液状をしたゴム樹液のこと。ゴムノキの幹に傷をつけて、染み出してくる粘性の液体です。このラテックス(樹液)を集めて加工し薄い膜状にした材料も、原料と同じくラテックスと呼ばれています。ラテックスバルーン(ゴム風船)の原料になるのは、トウダイグサ科「パラゴムノキ」のラテックス。「パラゴムノキ」の原産地は南米アマゾン流域ですが、現在では、マレーシアやインドネシアなど、東南アジアが主な生産地になっています。
ゴム
元々はゴムノキのラテックスから作る、弾性のある材料をゴムと呼びました。現在では、石油からも化学的に弾性ゴム作り出すことが出来ます。そのため、ゴムノキから作るゴムを「天然ゴム」、石油から作るものを「合成ゴム」と呼び分けています。つまり「ラテックスバルーン(ゴム風船)」と言った場合、ゴムノキのラテックスから作られた、天然ゴムを原材料にした風船という意味です。
「ラテックスバルーン(ゴム風船)」の歴史
西洋にゴムを持ち込んだのは、アメリカ大陸を発見したといわれる冒険家クリストファー・コロンブスだと言われています。第二回目の航海(1493~96年)で南米ハイチに上陸したコロンブスが、現地住民が黒いボールを弾ませるのを見て驚き、持ち帰ったのが始まりです。
日本にゴム風船がもたらされたのは、江戸時代の末期(1857年)。大阪で、イギリス人が膨らませた風船を売ったという記録が残されています。明治期に描かれた錦絵には、風船や気球が数多く描かれていますが、現代と同じく当時の人々にとっても、風船は夢にあふれた存在だったのでしょう。ちなみに、当時の風船は厚みがあって口で吹いて膨らますのは難しく、ボンベでガスを入れるものでした。
現在の柔らかいラテックスバルーンは、約70年前に生まれました。アメリカの科学者ニール・ティロットソンが猫の形に切り抜いたボール紙をラテックスに漬けたところ、猫型のバルーンが出来たのだとか。このバルーンは「キャットバルーン」の名で、ボストン愛国記念日に売られました。
天然由来の「ラテックス」、だから安全
開会式などで空に飛んで行く風船を見て、環境への影響を心配したことのある人もいるのではないでしょうか?ラテックスバルーンの原料は、ゴムノキという自然に生えている植物の樹液。木の枝や葉と同じ天然由来の材料ですから、生分解されて自然に還ります。バルーンリリース(風船を放すイベント)に使って良いのは、自然に生分解されるラテックスバルーンや他一部の生分解されるバルーンだけ、風船に入れるのはヘリウムガスだけと日本バルーン協会のガイドラインで決められています。ラテックスバルーンの原料である天然ゴムは、人体にとって無害な物質です。
※ラテックスアレルギーのある人を除きます
「ラテックスバルーン」は、自然に優しい
ラテックスバルーン(ゴム風船)の原料となるゴムノキの大部分は、東南アジアの熱帯雨林に設けられた大規模プランテーションで栽培されています。現在、地球環境のために熱帯雨林の保護が叫ばれていますが、ゴムノキの栽培は樹を切り倒さずに樹液だけを採取するものなので、熱帯雨林の減少を防ぐためには有効な栽培と言われています。自然から生まれて自然に還り、自然が破壊されるのも防ぐ、ラテックスバルーンは幾重にも自然に優しい存在です。